鉄道

御茶ノ水駅・聖橋

1904年に甲武鉄道の駅として開業した御茶ノ水駅と、1927年竣工の鉄筋コンクリートアーチ橋・聖橋が重なる神田川の谷。震災復興橋梁として生まれた橋と、2023年に新駅舎が完成した駅の改良工事を通じて、東京の都市形成史の一断面を読む。

神田川を渡る三つの線

御茶ノ水は崖の上に立つ街だ。神田川が武蔵野台地を深く刻んだ谷に、鉄道の高架橋、石造りのアーチ橋、そして地下鉄のトンネルが三段重ねで交差し、東京でもめずらしい立体的な都市の断面を見せている。

JR御茶ノ水駅は1904年(明治37年)に甲武鉄道の駅として開業し、1932年(昭和7年)に現在地へ移転した。中央線快速と中央・総武線各駅停車、そして地下の東京メトロ丸ノ内線が結節する乗換拠点として、千代田区と文京区の境に位置する学生街・楽器街の拠点を担ってきた。駅の構造は神田川の崖線上に張り出すように置かれており、ホームに立てば緑の渓谷を見下ろす独特の景色が広がる。

駅の南側に架かるのが聖橋だ。完成は1927年(昭和2年)。1923年(大正12年)の関東大震災で崩れた橋梁を再建する帝都復興橋梁事業の一環として建設された。橋長は79.3メートルで、神田川上の径間は36.3メートル。放物線を描く鉄筋コンクリートアーチが谷底の水面に向かって弧を引く。設計は山田守と成瀬勝武が担い、橋の名は一般公募によって決まった。北の湯島聖堂と南のニコライ堂(ニコライ聖堂)という二つの聖堂を結ぶ橋として「聖橋」と命名されたのだ。

土木遺産と新しい駅舎

聖橋は2007年(平成19年)に千代田区景観まちづくり重要物件に指定され、2017年(平成29年)には土木学会選奨土木遺産に認定された。完成から約100年を経て、橋は現役の交通施設として日々の往来を支えながら、都市景観の拠点としての位置づけが公的に確認されてきた経緯がある。

一方、御茶ノ水駅は2012年から大規模な改良工事に入った。急峻な地形に建つ駅でバリアフリーを実現するため、ホーム上部に人工地盤(約2900平方メートル)を形成し、エレベーターやエスカレーターで上下ホームとコンコースを接続する工事が進められた。聖橋口の新駅舎は2023年12月3日に供用を開始し、聖橋口の駅前広場は2025年3月31日に使用開始となった。耐震補強と段差解消を同時に実現したこの改良工事は、複雑な地形に根を下ろした駅ならではの難工事だった。

まとめ

御茶ノ水という場所の個性は、神田川の谷が生む地形にある。1932年移転の現駅、1927年竣工の鉄筋コンクリートアーチ・聖橋(橋長79.3m・径間36.3m)、谷底を走る丸ノ内線のトンネル——異なる時代の土木と建築が一点に集約されるこの景観は、東京の都市形成史の一断面として読むことができる。聖橋の中央に立って両側を見渡せば、往来する電車と緑の渓谷、遠くに二つの聖堂のシルエットが重なる、ほかにない眺めに出会えるはずだ。

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参考・出典

  • 土木学会関東支部 選奨土木遺産 聖橋(2017年認定)—橋長79.3m・径間36.3m・1927年竣工・RC造放物線アーチ橋・設計山田守・成瀬勝武(https://www.jsce.or.jp/branch/kanto/04_isan/h29/h29_1.html)
  • 千代田区景観まちづくり重要物件 第44号 聖橋(2007年3月28日指定)—命名由来・湯島聖堂・ニコライ堂(https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/4200/44-hijiribashi-r707.pdf)
  • 鹿島建設 JR御茶ノ水駅 新しい聖橋口駅舎と改札口がオープン(2023年12月3日供用開始)(https://www.kajima.co.jp/tech/civil_engineering/topics/231203.html)
  • 鉄道チャンネル 御茶ノ水駅聖橋口に駅前広場が誕生(2025年3月31日供用開始)(https://tetsudo-ch.com/12997691.html)
  • 御茶ノ水駅バリアフリー整備等工事—ホーム上部に人工地盤約2900m²形成・エレベーター・エスカレーター設置(各建設関係資料)
  • 御茶ノ水駅 - Wikipedia日本語版—1904年(明治37年)甲武鉄道として開業・1932年(昭和7年)現在地へ移転

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