渋谷駅(大改造)
1885年(明治18年)開業。JR東日本・東京メトロ・東急・京王の4社9路線が乗り入れるすり鉢状の谷底のターミナル駅。地形と地下河川が生む難工事として「100年に一度」の大改造が続き、2034年度の全体完成を目指す。
すり鉢の底に育ったターミナル
渋谷駅が開業したのは1885年(明治18年)3月1日。日本鉄道の品川線の一駅として始まったこの駅は、今日ではJR東日本・東京メトロ・東急電鉄・京王電鉄の4社が9路線を乗り入れる複合ターミナルへと成長した。渋谷の地形は「すり鉢」と呼ばれる碗状の低地で、周囲の台地との高低差はおよそ20メートルにのぼる。各路線が異なる方向・異なる高さから谷底へ向かって進入するため、最も高い東京メトロ銀座線のホームから最も深い東急東横線・東京メトロ副都心線のホームまで、垂直方向に30メートル以上の差が生まれた。地上の高架、地上レベルの高架橋、深い地下という三層が一か所に重なるこの構造が、渋谷駅をほかに類のない複合建築物にしている。
すり鉢地形は美しい眺望をもたらす一方で工学的な難題でもある。雨が降れば周囲から低地に集まりやすく、過去の台風では地下施設が浸水する被害が出た。さらに駅東口の直下には渋谷川が地下を流れており、新たな構造物を築くにあたってはその河川断面を確保しながら迂回路を設計する作業に3年以上を費やしたとされる。
「100年に一度」の改造——5回の線路切替と2034年完成
東急・JR東日本・東京メトロが主導するこの大改造は「100年に一度」と銘打たれた長期プロジェクトだ。2012年4月の渋谷ヒカリエ開業が可視的な変容の先陣を切り、2013年3月16日には東急東横線の渋谷駅地上ホームが廃止され、東京メトロ副都心線との相互直通運転が始まった。
JR東日本は2015年から駅本体工事に着手し、列車を動かしながら5回の線路切替工事を実施してきた。2023年11月に完了した第5回工事では山手線のホームを持ち上げる大規模な「扛上(こうじょう)」が行われ、線路の下に東西自由通路を設ける空間が初めて確保された。駅地下には4,000トンの雨水を一時貯留する洪水対策施設も整備済みで、すり鉢地形の弱点への対処が着実に進んでいる。2024年7月21日には新南改札が暫定開業し、渋谷ストリームや渋谷サクラステージ方面への新たな動線が生まれた。新駅舎の全体開業は2027年3月、東西自由通路を含む主要インフラの完成は2030年度、全体完成は2034年度が目標だ。
まとめ
渋谷駅は1885年の開業から140年、すり鉢状の谷地形と9路線の交差が生み出す複雑さを抱えながら東京の南西を支えてきた。4社・30メートル超の高低差・地下河川という難題に挑む「100年に一度」の大改造は、2013年の東横線地下化、2023年の山手線ホーム扛上と着実に進み、2034年度の全体完成へ向けて最終盤に差しかかっている。スクランブル交差点から駅へ目を向けると、仮囲いと新旧の構造物が混在する今の渋谷駅の姿がある。工事の先に現れるターミナルの全貌を想像しながら、この変容の時期を歩いてみてほしい。
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関連リンク
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参考・出典
- 渋谷駅 - Wikipedia日本語版・英語版(1885年3月1日開業・4社9路線・すり鉢地形)
- 東急株式会社 渋谷再開発 未来の渋谷(tokyu.co.jp)—2034年度全体完成予定
- JR東日本プレスリリース 2023年8月「渋谷駅改良工事 第5回線路切替工事」・2025年5月(新駅舎工事)
- Pacific Co. Insight Vol.2「渋谷駅工事のすり鉢地形・地下河川の課題」2025年4月(en.pacific.co.jp)
- 鉄道.comコラム「東横線地下化 2013年3月16日」(tetsudo.com)
- Timeout Tokyo「渋谷地下4,000トン貯留施設」2020年8月